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津野裕子「一角散」

一角散一角散
津野 裕子

青林工藝舎 2008-03
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大越孝太郎のマンガだけを目当てに買っていた2000年代のガロ(リアルタイムでは買っていない。微妙にズレがある)。大越氏以外の掲載陣でお気に入りは津野裕子でした。 しっかりした線で透明感を感じる絵、話は不思議な味わいを持ち、不条理な事さえ叙情的に感じてしまう。 表題作「一角散」は6年ぶりとなる書き下ろし作品。薬屋を営む親戚の家に住む事になった主人公の青年、姉に成りすまし一角獣を手なずけた少年が姉の行方を考える話。絵柄と薬、標本、幻獣たちといったモチーフで幻想的要素が強い作品。

女学生(舞台は現代なので女子高生か)の主人公の定かで無い記憶と幼馴染への淡い想いの始まりを描いた「トランス・トランス」は、変電所が舞台に設定された変わった作品。鉄格子や鉄塔といったあまり馴染みが無いものが背景に書き込まれていて、工場がちょっと好きなので気になる作品です。
「ダム、スワン」は風呂に浮かばせるあひるのオモチャがかつての持ち主の女性の下へ流れ着き、最終的には思い出の土地へ連れて行くという話。女性の回想とラストシーンが妙にしんみりします。
舞台はメキシコ?サボテンの上で死に掛けた少女と彼女を助けた男性の物語「セルピエンテ・ドゥルミエンテ」は蛇の造形がなんとも愛らしい。この人の描く動物はとても可愛いです。

最後に収録された「ゆーたん」は、薬、それもレトロなパッケージを模したイラストが所々に挿入されています。普段は主人公のゆーたんはふっくらした愛らしいマスコットのような女の子で、子供のかわいらしい発想を持っています。そして、そんな彼女を見守る美青年である叔父についてのことをゆうたんが語る形式をとっています。
「姿がいいとトクですか?」とゆーたんが叔父の容姿を褒める言葉に疑問を持った次のシーンでは、「なるほどそうかもしれません」と納得し、叔父がゆーたんのお人形遊び(ままごとかな?)に付き合い互いに向かい合っています。お互いにいい表情。


「一角はニッキの味がしたらしい」(「一角散」より)

作品それぞれが持つ味を静かにじっくり味わいたい、そんな短編集です。

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